読書記録「月に吠える」
著者:萩原朔太郎
出版社:新潮文庫
初版:1945年10月
66回目の投稿になります
最近、ヨルシカモチーフの作品を3冊読みました
「月に吠える」「夢十夜」「風の又三郎」です(ヨルシカの曲のタイトルとしては、それぞれ「月に吠える」「第一夜」「又三郎」となっています)
どれも、過去に読んだことのある作品でしたが、再読してみると以前とは異なる感覚で読めた気がします
それはおそらく、現在の自分の心情、知識、経験、年齢などが過去の自分と変容しているからだと思います
今回は、萩原朔太郎の詩集「月に吠える」を取り上げてみます
私は、詩の味わい方を知りません^^実際、読んでも「?」となる詩の方が多かったですし、いいなと思う詩も、どこがどういう風にいいのかという言語化が難しかったです
でも、萩原朔太郎自身が、この本の序文で次のように書いてくれています
「すべての良い叙情詩には、理屈や言葉で説明することの出来ない一種の美感が伴う。これを詩の『にほひ』という」
「私の詩の読者にのぞむ所は、詩の表面に表れた概念や『ことがら』ではなく、内部の核心である感情そのものに感触してもらいたいということである」
「リズムは以心伝心である。そのリズムを感知することの出来る人とのみ、私は手を取って語り合うことができる」
ありがとう朔太郎^^この序文のおかげで、いい悪いとか、共感できるできないとかそういう事じゃなく
「なんか気になる」「うまく言えないけど印象に残る」といった観点で読み進めることができました
例えば「群衆の中を求めて歩く」です
『見よこの群衆のながれてゆくありさまを
このひとびとの群は建築と建築との軒をおよいで
どこへどうしてながれ行こうとするのか
私のかなしい憂鬱をつつんでいるひとつのおおきな地上の日影
ただよう無心の浪のながれ
ああ どこまでもどこまでもこの群衆の浪の中をもまれて行きたい』
私、最近、歯医者に行ったり人に会ったりするために札幌の中心部をよく歩きます
この詩に触れた後に行き交う雑踏を見ると、見え方が全然違ったりして面白いです
私、なぜかわからないけど、一人でいるときよりも、たくさんの人がいる環境の方が淋しさや孤独感を覚える感じがするんです
この詩を読んでなんかそれを思い出しました^^
例えば「強い腕に抱かる」です
『風にふかれる葦のように
私の心は弱弱しくいつも恐れにふるえている
女よ、おまえの美しい精悍の右腕で
私のからだをがっしりと抱いてくれ
このふるえる病気の心を静かに静かになだめてくれ
ただ抱きしめてくれ私のからだを
ひったりと肩によりそいながら
私の弱々しい心臓の上に
お前のかわゆらしいあたたかい手をおいておくれ』
これを作者は相手の女性に言葉にして伝えられたのかなあ、いや思うだけで伝えられなかったんじゃないかな、みたいに勝手に感じたのと
私がすごく印象に残ったのが「ひったりと」と「かわゆらしい」です
なじみのある使い方だと「ぴったりと」だと思うんですが
「ぴったりと肩によりそう」だと、肩どうしがぎゅっとくっついている感じがしますが「ひったりとくっつく」だと、触れてはいるが
ぎゅっと感がなく、密着の温度感が低い感じがします
「かわゆらしい」も「かわいらしい」より少し控えめで儚い感じがします
なんかそういう表現が好きな作品でした^^
萩原朔太郎は、序文で、人間というものをこうとも表現しています
「思うに人間の感情というものは、きわめて単純であって、同時に極めて複雑したものである。」
「人間は、一人一人にちがった肉体と、ちがった神経をもっている。我のかなしみは彼のかなしみではない。しかし、それはまた、世界の何人にも共通なものである。この特異にして共通なる個々の感情に焦点を当てる。そのとき、永久に我々は孤独ではない」
→たぶん大学生くらいに読んだ時には、よくわからなかったような気がしていますが、今は彼の言いたい事がよくわかります
文章を書く人って、孤独について突き詰めていく作業をする人が多いのかな
序文の終わりは、次のような文章で締めくくられます
「月に吠える犬は、自分の影を怪しみ恐れて吠えるのである。疾患する犬の心に、月は青白い幽霊のような不吉の謎である。犬は遠吠えをする。私は私自身の陰鬱な影を、月夜の地上に釘付けにしてしまいたい。影が、永久に私のあとを追ってこないように。」
たぶんですが、ヨルシカの「月に吠える」の歌詞は、このあたりをメインに作られたのかなぁなんて思ったり
私、以前、自由律俳句の尾崎放哉を紹介した時「尾崎放哉とは友だちになれそう^^」と書いたのですが、萩原朔太郎とも友だちになれそうです^^
リアル世界の友だちも作ったら?と思いますが、まあそれはそれとして^^
これを読んでからヨルシカの「月に吠える」を聴くと、また違った趣になりますね
本の装丁もヨルシカコラボバージョンになっていていい感じです

本屋さんのピックアップ本みたいに、正面をこちらに向けて本棚に置きたくなります
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